2026年7月18日、浴衣を着て茶事に参加しました。茶事自体初めて、茶道初心者の私の思い出記録です。 「茶事って何?」「茶道に興味がある。どんなことをしているの?」と興味のある方に少しでも雰囲気が伝わればと思っています。結論、すごく貴重な経験となりました!ぜひご覧いただけると嬉しく思います。
茶事とは茶道の真髄を味わう場

茶事は、今回の浴衣茶事は、実は、茶道初心者の私が茶事の経験をするために準備してくださった特別な場でした。茶道のお稽古しか経験がなく茶会に出向いたこともない私に、茶道の先生は、「全体を早くわかって実際に経験できたほうが理解も深まるでしょ」と温かいお言葉をくださり、今回の機会を企画してくださいました。本当に嬉しくてたまりませんでした。
茶事にはテーマが設けられているようで、今回は盛夏の祇園祭をテーマにおもてなしをしてくださいました。
茶事と似た言葉で茶会もありますが、内容が大きく異なります。
茶事と茶会は違う
「御茶一服差し上げます」とご案内にあると、濃茶が出る少人数での茶事であることを指しますが、広く知られている「茶会」は、主に茶事の最後の薄茶点前部分だけで大勢のお客様をお迎えするものです。
茶事と茶会は形は違えど、目的は同じで「お茶(抹茶)を美味しくいただくため」にあります。茶事の約4時間のフルコースも、目的は美味しいお茶1杯のために。なんとも奥深い世界です。
いままでのお点前のお稽古でも掛け軸や茶花などから先生のおもてなしを感じていましたが、今回茶事を体験させていただいたことで、普段行っているお点前のお稽古は茶事をするためのほんの一部分に過ぎなかったのだと気づきました。
茶会で使うお道具などの説明書のことを「茶会記」という
大寄せの茶会では、一つ一つ説明ができないので、茶会記は待ち合いに置いておくそうです。一方で少人数の茶事では亭主が丁寧に説明するため、通常は掲示しないものです。今回は、先生が社中(同じ先生のもとでお茶を習っている門下の人たちの集まり)の記録として、料理の内容も含めて掲示してくださいました。
以下から茶会記と、その時に感じた思いを載せています。
待ち合い 〜茶室へ入る前から始まるおもてなし〜
祇園祭前祭後祭の
山鉾てぬぐい
赤紫蘇ソーダ

茶室に入る前から祇園祭のてぬぐいが迎えてくれました。窓際にうちわもあり、お祭りの賑やかな感じが想像される空間でした。赤紫蘇ソーダは氷が入ることを想定して濃く作ってくださったそうです。爽やかな香りに、暑さも和らぎ、涼しい気持ちになりました。それとともに、「これからどんなことが始まるのかな」とドキドキした高揚感でいっぱいになりました。
初座 〜季節のしつらえと炭手前に込められた心〜
本席 -季節と物語を感じる設え-
菊水鉾粽

床には祇園祭の「菊水鉾(きくすいぼこ)」の粽(ちまき)が飾られていました。食べるちまきではなく、無病息災、不老長寿、商売繁盛を願うお守りです。
菊水鉾の近くには昔武野紹鴎の屋敷があったこともあり、茶人とはつながりの深い鉾です。
祇園祭の季節感だけでなく、私たちへの「どうぞ健やかに」という先生からのお気持ちまで感じられ、茶事はお料理やお茶をいただく前から始まっているのだと実感しました。
炭手前 -湯を沸かすところから始まるおもてなし-

瓢釜
炭斗 淡々斎好み 独楽
香合 呂太鼓
炭手前とは、お茶を点てるためのお湯を沸かす炭を整える所作のことです。普段、目に見える一服のお茶だけに意識が向きがちですが、その準備の段階から丁寧に心を配ることに、茶道のおもてなしの深さを感じました。
懐石
ご飯 胡桃ゆかりご飯
汁 焼き茄子 辛子
向付 蒸穴子 実山椒昆布
わさび
煮物椀 枝豆豆腐 蓴菜
トマト、木耳、
素麺 青柚子
預鉢 揚げ浸し おろし
ナス、ピーマン、
パプリカ、隠元、
蓮根、椎茸
強肴 海老若芽胡瓜黄味酢
小吸物 乃し梅 針生姜
八寸 海 紫蘇巻サーモン、山 煮牛蒡山椒
香の物 かくや、沢庵、赤蕪
生姜奈良漬、オクラ
干大根、日野菜
今回の先生が考えてくださったこの献立は、朝茶事の仕様だそうです。
朝茶事では、軽く朝ごはんを食べることが前提で、生物の魚や焼き魚を出さず、そのかわり、香の物をたっぷり出してお茶漬けをしっかり召し上がってもらうメニューになっている特徴があるそうです。
今回は朝茶事とはいえ、お腹が空く時間(11時前スタート)だったこともあり、野菜料理をふんだんに使ったボリュームたっぷりのメニューにしてくださっていました。


先生の手料理のおいしさをどう表現したら良いものか…
うまく言葉にするのが難しいほど、本当に美味しかったです。
たとえば、茶懐石の中でのメインディッシュの役割を負っている煮物椀には、はじめて出逢う食材がたくさんありました。椀蓋を開ける瞬間の香りを楽しみ、見た目にも心を奪われました。
透明なぬめりに包まれた「蓴菜(じゅんさい)」は夏の高級食材で、つるんとした喉越しが心地よかったです。また、青柚子が添えられていたことにより、お椀を開けたときにふわっと爽やかな香りが届き、夏の暑さを忘れさせてくれるような一椀でした。素麺を束ねている見た目の美しさにうっとりし、温かいトマトも新鮮!
朝茶事では特に軽い味わいが好まれるそうで、一椀の中に美しさとおいしさと新しい食材との出会いからくる高揚感がぎゅっと詰められていました。
また、懐石の中には、「海」と「山」を表現した一皿もありました。
紫蘇で巻かれたサーモンと、山椒を添えた煮牛蒡。サーモンが大好きな私は、サーモンの脂身と紫蘇がさっぱりとまとめられていてオシャレな組み合わせだなあと感激でした。この「海(サーモン)」と「山(煮牛蒡)」のお料理が手で摘んでいただける形になっているのには理由がありました。
亭主はお箸を持って席中に入っていないので客の盃を借り、客から勧められると、海のもの、山のものなどを手で摘んでいただくようです。そのためにお箸を使わず手で食べられる形になっているとのことでした。
そしてこのような美味しいお料理とともに、お酒も楽しめるんです。初めて教えていただいた時、お茶の場でお酒飲めるんだ!とすごく嬉しかったです。(しかも私日本酒が一番好き)
知らなかった「茶懐石にはお酒がつきもの」という中で、八寸は実は亭主と客が酌み交わし、茶事を一座建立(亭主と招かれた客の心が通い合うこと)するためのクライマックスの役割を担っているそうです。
一品一品、使う食材や器、そして全体のバランスを考えて準備、料理してくださったと思うとそれだけで心が満たされました。一品ずつ運ばれてきて、目で見て香りを楽しみ、口に運ぶ。 その時々で、”次のお料理はどんなのかな?””この食材なんだろう” “こんな組み合わせもあるんだ!”と常に五感が刺激されていました。
後座 〜一碗のお茶をいただく時間〜
濃茶 名水点
茶碗 長次郎鉢開写
茶入 清水六兵衛
瀬戸耳付大茶入
水指 木地釣瓶に御幣
茶 明昔 一保堂
菓子 したたり亀廣永製
名水点とは、名水(特別な水)を用いて濃茶を点てるお点前のことです。名水とは、その土地で古くから良い水として知られる井戸水や湧き水のことで、今回は社中の方の地元のお水が「早朝に汲んできました」という設定で使われました。
このように、お水1つとってもそのようなストーリーを教えていただくと、その名水の景色に思いを馳せたり、名水の場所やその観光地、有名なお菓子などのお話にもつながり、話題が広がりました。水ひとつとっても奥深さを感じるひとときとなりました。
お菓子には、祇園祭の菊水鉾のお茶席で供されることで知られる「したたり」をいただきました。夏の京都を代表する祇園祭にゆかりのあるお菓子からも、季節を感じる趣向が込められていました。
濃茶をいただくと、お酒がいい感じでまわっていたところに、頭をシャキッと整えてくれるような感じがしました!抹茶が2日酔いに効くというのも納得だなと体感したのも貴重な経験でした。
薄茶
水指 古備前 江戸末期
山本陶秀極
中次 塗り朝顔蒔絵
茶碗 パートドヴェール
茶 七樹
菓子 祇園祭ふ焼き煎餅
末富
カモメサンボン
村雨 自家製

薄茶には、私の夫の家業で作っている抹茶(鈴鹿の七樹)をご用意いただきました。
抹茶をいただいた時、”七樹の抹茶に似てるな〜”と思ったのですが、恥ずかしながら断定ができず確認をさせていただきました。そっと七樹の抹茶を取り入れてくださる先生の優しさが嬉しかったです。
抹茶の味をしっかり感じつつも苦味が強くないところが夏のお菓子とも美味しく調和されていました。自分が携わるお抹茶をこのような茶事の席でいただくと特別なものに感じました。茶事にとけこんだ七樹の抹茶、最高でした。
煎餅ときくと醤油味や塩味のしょっぱいせんべいを想像されるかと思うのですが、茶席での煎餅はほんのり甘いんです。これが本当、クセになりそうなおいしさなんです。甘すぎず、控えめな甘さに手が止まらなくなりそうです笑
全体の感想
至れり尽くせりの空間で、本当に幸せなひとときでした。茶会記をふりかえってみると、懐石には枝豆や蓴菜、紫蘇、青柚子、焼き茄子、実山椒など、夏を感じる食材が随所に取り入れられていました。盛夏の祇園祭というテーマにぴったりの食材で夏を満喫させていただきました。
後から教えていただいたのですが、茶懐石には、走り、旬、名残の食材を集めて使うのが良いと言われているようです。そのことを聞き、茶道に触れることでその時期や季節を表す食材にも興味をもち、季節を今以上に味わえるようになる気がしました。
私が目に見えていることや受け取っていることだけでも、とても多くのお心遣いを感じました。ということは、先ほどの茶懐石に使われていた食材のように、きっとそれ以上にもっとたくさんのことを想い、与えてくださっているのだと思いました。
茶道の世界の入り口にたったばかりの私ですが、茶道を通して人と仲良くなること、相手を知り大切にすることといった心の部分を体感し学べることが、人生をより良くする上でとても貴重な経験なのではないかと感じています。
先生をはじめ、温かく迎えてくださった社中の皆様のおかげで、初めての茶事を心から楽しむことができました。
今回たくさんのおもてなしをしていただいて嬉しかった気持ちを忘れず、少しずつおもてなしをできるようになっていきたいと思いました。



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